文殊院

文殊院は、奈良県桜井市阿部にある寺院。
神仏霊場巡拝の道 第34番です。

 山号は安倍山。有力豪族の安部氏が、一族の本拠地である現桜井市阿部に、氏寺として建立した安倍寺が、安倍文殊院の前身である。その創建は、645年(大化一)にまで遡る。
 崇敬寺ともよばれたこの寺は、大化の改新で初代左大臣となった安倍倉梯麻呂の建立と『東大寺要録』に記されている。

 本尊の文殊菩薩は、獅子に乗った総高約七メートルの巨大な像で、日本の文殊像としては最も大きい。四人の眷属を従えた五台山文殊、あるいは渡海文殊とよばれる形式で、「日本三大文殊」のひとつに数えられている。
 文殊菩薩像は、1563年(永禄六)兵火で伽藍が失われたときにも焼失をまぬがれ、1665年(寛文五)に安倍寺満願寺として再興されるにあたって、本尊となった。
 現在の名称に改められたのは、明治の神仏分離によって寺院としての存続を決定したおりのこと。廃仏毀釈の嵐のなかで、文殊菩薩像を護り抜こうとの決意からだったという。
 このとき、鎮守として祀られていた白山神社は、ご神体を抜いて大日如来像を安置することで存続がはかられ、現在も境内に建っている。境内にはほかに、遣唐使となった安倍仲麻呂や、陰陽師安倍晴明を祀った堂宇があり、安部一族の氏寺という性格を物語っている。

「神と仏の道を歩く」より

不動堂

白山堂

閼伽井古墳(東古墳)

本堂

仲麻呂堂 (金閣浮御堂)